大久保 茂男(おおくぼ しげお、1946年10月27日 - )は、日本の理論物理学者。高知県立大学名誉教授。専門は原子核理論。原子核のクラスター構造(分子的構造)、原子核虹の研究などを行う。 京都大学理学博士。現在大阪大学核物理研究センター研究員、高知県立大学名誉教授。 高知県高知市出身。京都大学理学部に入学。物理学科でノーベル賞受賞者である湯川秀樹博士および中間子論建設の協力者、小林稔博士の教えを受ける。京都大学大学院理学研究科物理学第2専攻原子核理論研究室(小林稔 研究室)で原子核理論研究を行う。 理論物理学、ハドロン多体系、核理論、原子核のクラスター構造、原子核の虹散乱、虹理論、超変形とクラスター構造、αクラスター構造のボーズ・アインシュタイン凝縮、原子核の虹、核反応、場の理論的超流動クラスター模型 京都大学在学中に湯川秀樹の講義をうけ,また1967年訪日したハイゼンベルグ (W. Heisenberg) の講義を聞く.物理学研究において根底思想としての哲学思想があることを知り影響を受ける.京都大学で研究中に日本で初めて開かれた1975年の原子核の国際会議で来日した英国のブリンク(David Brink),ベルギーのライデマイスター (G. Reidemeister),ドイツのフォン エーレツエン(W. Von Oertzen)と会い,後に共同研究することになる. 1969年ドイツ・ハイデルブルグにあるマックス・プランク・原子核物理学研究所のガウル(G. Gaul)らはα粒子を40Ca原子核に入射散乱させると180度近くの後方角度に異常に大きく散乱されることを発見した.それまで用いられ有効と考えられてきた標準的な光学ポテンシャル模型では全く理解できない現象であり,ラザフォード (E. Rutherford)がα粒子を金に散乱させて後方角に異常に多くα粒子が散乱されることから,原子の中心に固い芯があると考え,原子核の発見にいたったのと似たα粒子散乱の後方角異常散乱を彷彿させるこの未知の現象の背後に未知の原子核の秘密・謎があるのではないかと興味を持つ.当時日本を中心に勃興しつつあったアルファ・クラスター模型の視点から関心を寄せ研究に取り組む.アルファ・クラスター模型は歴史的には古く1937年に提唱された核模型であるが,殻模型,集団運動模型の登場により1950年代にいったんは否定された原子核模型である.1975年には日本で初めて東京大学原子核研究所と理化学研究所によって原子核のクラスター構造と反応に関する国際会議が開かれた.その国際会議ではのちに博士論文となるα粒子散乱の後方角異常とクラスター構造について講演発表した.この国際会議に出席したα粒子の後方散乱異常について研究していたオックスフォード大学のブリンクが会議後京都を訪問し,京都大学の原子核理論研究室でα粒子散乱の後方角異常現象について討論する.1985年にはブリンクのいるオックスフォード大学・理論物理学研究所に滞在し軽い重イオン核融合反応断面積の励起関数にあらわれる未知の振動模様の発現機構について共同研究する.振動模様が内部波と外部波の干渉で生じることを発見する.1985年秋,α粒子の後方角異常現象に興味を持って研究していたベルギー・モンス大学のミシェル(F. Michel)を訪問し,ブリュッセル大学のライデマイスター(G. Reidemeister)も加わりα粒子と40Caの核融合反応機構について共同研究を始める.α+40Ca 核融合反応断面積の励起関数に見られる振動模様が複合系44Ti核のアルファ・クラスター構造によって引き起こされることを発見する.1980年代前半までに日本を中心に進展した原子核のクラスター構造の理論的研究で,軽い原子核ではクラスター模型が殻模型や集団模型では説明できない現象をも含めて核構造を包括的に説明でき非常に有効な模型であることが確立しつつあった.しかし,質量数40以上の重い原子核領域では殻模型構造の根拠となっているスピン・軌道力が非常に重要になるが,その力は他方でα粒子を壊す働きをするので,44Tiのような重い原子核ではアルファ・クラスター構造模型は成立せず殻模型構造的になると考えられていた.α粒子散乱後方角異常と核構造の統一的理解の視点から,α+40Ca系の核融合反応研究を発展させ,典型核である44Ti原子核においてアルファ・クラスター構造が存在しその証拠となる負パリティ回転アルファ・クラスターバンドの存在することを1986年に理論的に予言.その回転アルファ・クラスターバンドの状態は1990年大阪大学核物理研究センターのAVF加速器と精密測定器「雷電」を用いて東北大学の山屋 堯らの実験チームによる探索実験で理論の予言通り発見される.理論家として最初から山屋らの実験チームによる実験に加わり実験中に助言を行う.1993年にはベルリンのハーン・マイトナー研究所(現在のヘルムホルツ研究所)のサイクロトロンを用いた実験でグアゾ-ニ(P.Guazzoni)のチームによっても予言された44Tiのアルファ・クラスター回転バンドの状態が確認された.1988年に『Progress Theoretical Physics』誌にて40Ca原子核にもアルファ・クラスター構造をもつ負パリティ回転バンドの存在を予言.予言されたアルファ・クラスター状態は1993年阪大学核物理研究センターのAVF加速器と精密測定器「雷電」を用いて東北大学の山屋らの実験チームにより発見された.質量数40以上のfp殻領域の原子核においてアルファ・クラスター構造が存在しアルファ・クラスター模型が成立することが理論的・実験的に確立され,重い原子核の領域へアルファ・クラスター研究が大きく切り開かれることとなった.アルファ・クラスターが質量数40付近の他の核でも存在することやアルファ・クラスターの負パリティ回転バンド状態がいくつかに分岐することも微視的理論研究で明らかになった.α粒子散乱の後方角異常とアルファ・クラスター構造の存在が同じ相互作用ポテンシャルでもって統一的に理解できること示された.ブリンクらは後方角異常現象が標的原子核の内部領域まで侵入した波である内部波によると半古典的手法で証明したが,その内部波が44Tiにおけるアルファ・クラスター構造の存在と関係していることが明らかになった.1995年には質量数90付近の94Moと212Poの原子核においてもアルファ・クラスター構造が存在するとの論文を発表.さらに重い核の領域でのアルファ・クラスター構造研究のさきがけとなった.
出典:ウィキペディア「大久保茂男」(CC BY-SA 4.0)を一部抜粋
